第二話 仲間との出会い

 

 神聖なる二つの宝石が悪しき者の手によって盗まれたことにより、ヴィクトリアス城に魔物が押し寄せ、城は壊滅的な打撃を受けた。ヴィンと城の兵士たちは死力を尽くして魔物を全滅させることに成功したが、何者かに盗まれた二つの宝石を取り戻さない限り、世界は破滅してしまうとの王様の言葉を聞き、ヴィンは単身ヴィクトリアス城の宝石を取り戻すための旅に出ることを決意するのであった……。

 

 ヴィクトリアス城を後にしたヴィンは、城から北東にある港町を目指すべくただひたすら草原を歩いていた。結界が破られた影響で、草原には魔物がうろついていた。

「魔物がうようよしている…これも二つの宝石が盗まれたことが関係しているな。早いところ港町に行き、仲間を見つけないとな。」

魔物との遭遇を避けるべく、ヴィンは急ぎ足で港町のほうへと向かう。しかし、ヴィンの気配に気づいた地狼が牙をむき出しにしてヴィンのほうへと向かってくる。

「しまった…。野生の地狼に気づかれてしまった!!逃げても追いかけてきそうだから、ここは戦うしかないな……。」

地狼はフェルスティア全域に生息する野生動物だが、結界が壊されたことで発生した悪しき瘴気のせいで理性を失い、目に映るものすべてに襲いかかる凶暴な野獣とかしていた。ヴィンは剣を鞘から抜き、戦う構えを取る。

 「グルルルル……」

地狼は血走った目でヴィンを睨みながら、スピードを上げてヴィンのほうへと飛びかかる。ヴィンは咄嗟に盾を構え、防御の態勢を取る。

「攻撃を防御したあと、剣の一撃で終わりにしてやるっ!!

地狼の飛び掛かり攻撃を防御したあと、ヴィンは剣の一撃を地狼に叩き込む。剣の一撃を受けた地狼はその場に倒れ、息絶える。

「ふぅ…随分歯ごたえのない相手だったな。そんなことより早く港町へとむかわ……!?

再び足を進めようとした瞬間、ヴィンの背後に大きな影が映る。ヴィンが大きな影のほうに振り返った瞬間、ヴィンが仕留めた地狼を鷲掴みにする飛竜の姿がそこにあった。

 「あ…あれは飛竜ではないか……。城にあった魔物辞典でしか見たことはないが、実物を見るのはこれが初めてだ。今の俺の実力では奴とまともに戦っても負けるだけだから、ここは逃げるしかないな…。」

圧倒的な力の差を感じたヴィンは、飛竜に気づかれないようにそそくさとその場を去る。ヴィンが去った後、飛竜は地狼の死体を鷲掴みにしながら、翼をはばたかせて空へと飛び去って行った。

「飛竜を見た瞬間、もう死ぬかと思ったぜ。おっ、そろそろ港町が見えてきたぞ……。」

魔物たちを退けたヴィンは、ヴィクトリアス城の南東にある港町へと足を踏み入れる。港町に入ったヴィンは旅に同行してくれる仲間を探すべく、街の一角にある酒場へと向かっていく。

 「いらっしゃい……ここは戦士たちが集う酒場だ。ゆっくりしていってくれよ。」

酒場に入ったヴィンは、戦力になりそうな戦士を探すべく酒場の中を見回す。ヴィンはしばらく酒場の中を見回った後、カウンター越しで酒を飲んでいる筋肉質の男に目を付ける。

「ウホッ…いい男。筋肉質の男が仲間なら、心強い戦力になりそうだな。」

筋肉質の男を仲間にするべく、ヴィンはすかさず交渉を開始する。

「ゆっくりしているところすみません。私はヴィクトリアス城の兵士のヴィンと申します。ヴィクトリアス城から聖なる二つの宝石が何者かによって盗まれてしまったので、それを取り戻すために旅をしているのです。ぜひとも私の旅の仲間になっていただけませんか…?

その言葉に、筋肉質の男は一緒に同行できないという旨をヴィンに伝えた後、再び酒を飲み始める。

「それは大変なことだな。ヴィクトリアス城の聖なる二つの宝石とやらを取り戻す旅は一人で大変そうだけど、私はすでに仲間たちと魔物討伐の旅をしているんだ。悪いが、他の人を当たってくれないか。」

筋肉質の男を仲間にすることができず落胆するヴィンの前に、一人の剣士が彼の前に現れる。

 「君、旅の仲間を探していると言ったね。僕の名はジョンと言います。ぜひとも僕を連れて行ってはくれませんか!!

仲間になってくれるとの言葉を聞いたヴィンは、嬉しそうな表情で了承する。

「おお…金もない貧弱な兵士の旅の仲間になってくれるか!!私の名はヴィンと申します。私と一緒に、ヴィクトリアス城から盗まれた宝石を取り戻しましょう!!

剣士のジョンを仲間に加えたヴィンは意気揚々と酒場を後にし、一日の疲れを癒すべく宿を目指す。宿へと向かうその道中、ジョンは次の目的地のことをヴィンに伝える。

「まずはここから北の方角にあるドルクポリスを目指しましょう。大きな都市なら情報もありそうなので、行ってみる価値はあると思いますよ。今日は町の宿で一泊し、明日の朝に出発だ。」

「そうだな。朝方なら飛竜の活動時間ではなく、餌を求めて狼や野生動物が徘徊する時期なので、戦いの経験も稼げそうだな。おっ、宿が見つかったぞ。今日はここに泊るぞ。」

その言葉の後、二人は宿へと向かい一夜を過ごすのであった……。

 

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