第一話 冒険の始まり

 

 このお話は、レイオスやクリスの長き戦いの物語を遡ること千年前……フェルスティアの中南部に位置するヴィクトリアス城にある二つの聖なる宝石を巡る戦いを描いた物語である。

 この物語の主人公であるヴィンは、ヴィクトリアス城の南部に位置する辺境の村アルドに生まれた。彼が17歳になったころ、ヴィクトリアス城の兵士が村に現れた。
「この村に兵士志願者の者はいないかね。ここ最近魔物が増えて兵の数が足りない状態なのだ。」
兵士志願者を募るヴィクトリアスの兵士が掲示板に兵士募集の張り紙を貼ろうとしたその時、一人の青年が兵士に話しかけてきた。そう、その青年こそが村一番の剣士として名をはせていたヴィンであった。
 「すみません俺を兵士として働かせてくださいっ!!俺はヴィンといいます。」
ヴィンの言葉を聞いた兵士は少し悩んだ末、首を縦に振ってこう答える。
「確かに、君は体つきもよく兵士に向いているな。だが君を兵士として採用するかは訓練の成果しだいだ。明日また来るから、家の方々ともそのことを話しておいてくれ……。」
ヴィンにそう言い残した後、兵士はアルドの村を後にするのであった……

 その翌日、昨日アルドの村を訪れた兵士がヴィンの家に訪ねてきた。旅の支度を済ませたヴィンは急いで玄関に急ぎ、兵士に一礼をする。
「おはようございます兵士様。昨日の夜に両親や村長にそのことを話し、許可を得てきました。」
「わかった。では今から君をヴィクトリアス城へと案内しよう。私についてきたまえ。」
ヴィンは兵士に連れられ、アルドの村を後にしヴィクトリアス城へと向かう。数十分かけてヴィクトリアス城へと到着した二人は、王様に挨拶をするべく王の間へとやってきた。
 「王様がおまちかねだ。ヴィンといったね王の間ではくれぐれもそそうをなさらぬようにな。」
兵士からそう告げられたヴィンは、意を決して大扉を開けて王の間へと入る。ヴィンが王の間に現れた瞬間、ヴィクトリアス王がヴィンを出迎える。
「君がアルドの村に住むヴィンと言ったな。アルドの村に行かせた兵士から話は聞いた。私の名はヴィクトリアス王セント・クラヴィス二世だ。君は兵士になりたいといったなよかろう。ただし、これから兵士になるための一か月の訓練を乗り越えたら兵士として働かせてやろう。異議は無いか。」
「分かりました。一か月の訓練を乗り越え、ヴィクトリアス城を守る兵士になって見せます!!
ヴィンの言葉に、ヴィクトリアス王は感心した様子でヴィンにこう答える。
「ほう……君には何か強い力を感じるな。ヴィンよ、今から貴様は見習い兵士だ。これから一か月の厳しい訓練に耐え抜いたら、君をヴィクトリアスの兵士として採用しよう……。ではただちに兵士の詰め所へと向かい、訓練に励むのだっ!!
ヴィクトリアス王から見習い兵士の称号を与えられたヴィンは、兵士たちの詰め所へと向かい訓練に励むのであった。彼は一か月の厳しい訓練を弱音を吐くことなくパスし、正式な兵士として働くこととなった……

 ヴィンが正式なヴィクトリアス城の兵士となって一年の時が過ぎたとき、その平穏な時は音もなく崩れ落ちた。ヴィクトリアス城の地下に祀られている二つの宝石が何者かによって盗まれたことにより結界が破壊され、邪悪な魔物がフェルスティアに現れてしまった。聖なる二つの宝石を失ったヴィクトリアス城は悪しき魔物に攻め込まれ、陥落寸前に陥っていた。
 「大変だっ!!魔物が次々とこの城を襲っている。ヴィンよ、私は城の外にいる魔物の討伐へと向かうので、お前はほかの兵たちとともに王を守護するんだっ!!
他の兵士の命を受け、ヴィンはすぐさま王の間へと急ぐ。王の間にはまだ魔物が現れてはいないが、兵士たちはすでに戦いの構えに入っていた。
「ヴィンよく来てくれた。外にいる兵士たちは死力を尽くして魔物と戦っているが、城の外壁を破壊されて魔物が城内に侵入してしまった。我々兵士たちは分担して魔物を倒してはいるが数が減らん。ぜひとも君の助けが必要だ。」
兵士の一人がヴィンにそう話した瞬間、王の間に下級魔物であるオークが入りこんでくる。
 「グヒヒ……王の命は俺がいただくっ!!王さえ殺してしまえば、この城は俺のものだっ!!
不気味な笑みを浮かべながら、オークが武器を構えてヴィクトリアス王へと近づいてくる。ヴィンは王を守るべく、剣を片手にオークに立ち向かう。
「魔物めこの俺が相手になってやる!!他の兵士たちは王の守護を頼むっ!!
兵士たちに王の守護を命じた後、ヴィンは勇敢にもオークに戦いを挑む。ヴィンは覚えたての魔法を唱え、オークに攻撃を仕掛ける。
「まだ魔法も見習いだけどやってみるしかないっ!!ファイアボールッ!!
詠唱の後、ヴィンの手のひらから小さな火球が放たれる。しかしオークは鼻から勢いよく水を噴き出し、ヴィンの放った火球を消火する。
「グヒヒ貴様の実力はしょせんこの程度のものだ。おとなしく倒されろってんだっ!!
オークは巨体を生かした体当たりを繰り出し、ヴィンを大きく跳ね飛ばす。ヴィンは大きく態勢を崩したが、再び剣を構えて戦いの構えを取る。
 「くそっ今のは痛かったぞ。だが、俺はあきらめないぞっ!!
ヴィンは炎の魔力を剣に宿したあと、剣を突き出してオークへと向かっていく。ヴィンが構えた剣はオークの体を貫き、焼き尽くす。
「この俺がこんな兵士にやられるとは……ぐふっ!!
オークとの戦いを終えたヴィンの元に、ヴィクトリアス王が駆け寄り、ヴィンの傷を癒す。ヴィンの傷を回復させた後、ヴィンにこの城に何が起こっているのかを告げる。
 「ヴィンよ、そなたのおかげで助かったぞ。実はな、この城の地下にある結界が破られ、二つの宝石が盗まれてしまったのだ。そのせいで魔物が世界中に現れ、民を襲っているのだ。そうだな、二つの宝石のことについてはまだ話してはいなかったな。このフェルスティアという世界は、ヴィクトリアス城にある二つの宝石の力によってこの世界は守られているのだ。ひとつはダイヤモンドで、金鉱で何万年もの時間をかけて生み出された最高のダイヤ鉱石を、この城の地下深くにある聖なるの泉で祝福された聖なるダイヤだ。もう一つは真珠で、千年生きたアコヤと呼ばれる貝を、聖なる泉に二年間住まわせて貝ごと祝福させて生み出した至高の玉石なんじゃ。その二つの宝石が無くなった今、世界に邪悪なオーラに包まれ、世フェルスティアは崩壊してしまう。ヴィンよ、まずはこの城から少し歩いた港街の酒場で仲間を探し、この世界を救ってくれっ!!これは私からの餞別だ。少しだけしかないがこれで旅の支度を整えるがいい。」
ヴィクトリアス王はヴィンに新しい剣と盾、そして150Gが入った袋を手渡す。ヴィンに旅の準備品一式を手渡した後、王は再び玉座に腰かける。
「ありがとうございます!!では私はこれからヴィクトリアス城から盗まれた二つの宝石を取り戻すとともに、世界を救う旅に向かいます!!王様もどうかご無事で。」
「城のことは大丈夫だ、世界から魔法神官や魔道士や司祭を呼んでこの城だけでも結界をつくる。ヴィンよ、この世界を救えるのは君だけだ……よろしく頼むぞ。」
王様の言葉を受け、ヴィンはヴィクトリアス城を後にし、港町へと続く草原を歩いていく。こうして、失われた二つの宝石を取り戻すため、ヴィンの冒険が幕を開けたのであった……

 

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